「橋本愛 トラウマ作品」を語る上で外せないのが、中島哲也監督がメガホンをとった映画『告白』(2010年公開)です。橋本愛が演じた北原美月は、クラスメイトから壮絶ないじめを受けながらも、ファミレス毒殺事件の犯人「ルナシー」に歪んだ心酔を見せる女子生徒でした。物語後半、少年Aとの関係が破綻した末に下される凄惨な結末は、劇場公開当時、映倫区分R15+指定の緊張感とともに多くの観客へ拭いがたい戦慄を植え付けました。
さらに2012年公開の学園ホラー映画『Another』では、眼帯をつけた謎の少女・見崎鳴を熱演。綾辻行人の本格ミステリホラーを原作とする同作では、階段から転落した生徒の喉元に傘の先端が突き刺さるシーンなど、日常に潜むショッキングな死の描写が連続し、中高生を中心に「二度と傘を持って階段を駆け下りられない」といったトラウマ反応がSNS上で溢れかえりました。同年には映画『貞子3D』で貞子役を演じるなど、彼女のキャリア初期は「日常を恐怖で侵食する美少女」としての記号性を極限まで引き出された時期でした。
現場スタッフの証言や当時の映画誌レビューを振り返ると、並外れた橋本愛の演技力と評判は、「そこに実在しているかのような虚無感」と「計算された沈黙の重さ」によって形作られていたことが分かります。観客のトラウマとなったのは、単なるスプラッター演出ではなく、彼女の研ぎ澄まされた瞳が放つ底知れない冷徹さにあったと言えます。