うなぎ料理といえば、一般的には蒸してタレをつけて焼く「蒲焼」や「うな重」が主役だ。しかし、一尾の鰻から取れる身はごく一部に過ぎない。戦後の食糧難や高度経済成長の只中で、「捨てられていた頭や肝、ヒレ、骨の周りの身を余すことなく美味しく食べさせられないか」という職人の探求心から生まれたのが、うな鐵の串焼きである。
客を惹きつけてやまない最大の要因は、目の前の焼き台で職人が団扇を操り、炭火の強弱を見極めながら一串ずつ焼き上げる臨場感にある。部位ごとに異なる火入れの加減、タレと塩の使い分け、山椒のピリッとした刺激が織りなすリズムは、一度体験すると忘れられない中毒性を持つ。高級割烹では数十席のうちの1品として扱われる希少部位が、ここでは主役として堂々とカウンターに並ぶのだ。
注文に迷った際の鉄則は、まず職人に「一通り」と告げること。その日おすすめの串が5〜7本テンポよく提供され、鰻という魚が持つ淡白さ、脂の濃厚さ、内臓のほろ苦さといったグラデーションを舌の上で旅することができる。
絶対に押さえておくべき代表的な串焼きの部位
店を訪れる前に知っておきたい代表的なうな鐵の串焼き種類と特徴は以下の通りだ。
- 短冊(たんざく):鰻の身を短冊状に切り分け、串に刺して焼いたもの。タレで香ばしく、あるいは白焼き風に塩とワサビで身本来の旨味をダイレクトに味わえる王道部位。
- カブト:鰻の頭部。じっくり蒸しを効かせて骨まで柔らかく煮崩したのち、炭火で香ばしく焼き上げる。凝縮されたコラーゲンと甘辛いタレの相性が抜群の一串。
- 肝焼き(きもやき):内臓(胃や肝臓周辺)を数尾分集めた贅沢な串。心地よい苦味と濃厚なコクが特徴で、冷酒や辛口の日本酒を呼ぶ定番。
- くりから:倶利伽羅不動明王の持つ利剣に巻き付く龍に見立てた串。細長い身を螺旋状に巻き付けて焼き、ジューシーな脂の甘みが滴る。
- ヒレ:背ビレや尾ビレ周辺のゼラチン質をニラやネギに巻き付けたもの。外はカリッと、中はとろりとした脂の旨味が広がる通好みの逸品。
- レバー・バラ身:1頭からごく僅かしか取れない超希少部位。入荷数が限られるため、口開け早々に品切れとなるケースも珍しくない。