映画『テルマエ・ロマエ』において、秘湯と並びファンを歓喜させたのが、日本の日常的な湯処である「街の銭湯」の描写です。ルシウスが初めて現代日本の「平たい顔族(日本人)」と出会った現場こそ、東京都北区に現存する名銭湯です。
滝野川「稲荷湯」(東京都北区)|登録有形文化財に甦る昭和宮造り建築
ルシウスが湯船の底から突如顔を出し、桶の「ケロリン」の文字を見つめ、風呂上がりにフルーツ牛乳を一気飲みした伝説のシーンは、JR埼京線・板橋駅から徒歩約6分の滝野川 稲荷湯で撮影されました。大正2年創業、昭和初期の唐破風(からはふ)屋根を持つ壮麗な宮造り銭湯であり、国の登録有形文化財に登録されています。
稲荷湯は、木造銭湯の維持が全国的に困難を極める中、地域住民とボランティア、文化庁などの助成を活用した大規模な耐震改修プロジェクトを完遂。隣接する木造長屋は「稲荷湯長屋」として再生され、お風呂上がりの休憩や喫茶、コミュニティイベントが楽しめる空間として2026年現在も活気に満ちています。男湯の壁一面に描かれた雄大な富士山のペンキ絵を見上げながら湯に浸かれば、ルシウスが味わった強烈なカルチャーショックを肌で追体験できます。