ネット上の就職・転職コミュニティでは「残業時間月5時間未満=神企業」といった短絡的な賞賛が目立ちますが、労働経済学および現場取材の観点からは、看過できない重大な落とし穴が存在します。
第一の盲点は、「基本給の低さを残業代で補填する給与設計」の崩壊です。残業削減が進んだ結果、月給が手取りで数万円単位で激減し、生活困窮に陥る「残業代ショック」が多発しています。残業時間が極端に少ない企業を選ぶ際は、残業代ゼロを前提とした基本給水準や賞与テーブルが生活設計に見合っているかを厳格に見極めなければなりません。
第二の盲点は、「名ばかりの労働時間短縮によるスキルの空洞化」です。業務量そのものは減っていないにもかかわらず、単に「残業禁止」の号令だけが出された職場では、若手社員に対する教育やフィードバックの時間が真っ先に削られます。結果として体系的な育成機会を奪われ、市場価値を高められないまま30代を迎えてしまうリスクが指摘されています。
残業が少ないこと自体は歓迎すべき環境ですが、それが「徹底した業務DXと適正な人員配置によるもの」なのか、それとも「単なるコストカットや放置によるもの」なのか、その背景構造を冷静に見定める必要があります。