職場の同僚や友人には絶対に見せない姿をさらけ出す背景には、無意識に働く心的なメカニズムが存在します。男性心理の根底にある動機を心理学の視点から分解すると、主に3つの要素が浮かび上がってきます。
最も有力な説明となるのが、精神分析の祖ジークムント・フロイトが提唱した「退行現象(リグレッション)」です。人間は過剰なプレッシャーや葛藤に直面した際、心理的発達段階を無意識に過去へ巻き戻し、無条件に愛され保護されていた幼児期の行動様式をとることで心の平衡を保とうとします。責任ある立場を演じ続ける現代の男性にとって、恋人と過ごすプライベート空間は、社会的な仮面(ペルソナ)を脱ぎ捨てて無防備になれる唯一のシェルターなのです。
もう一つの決定的な要因が、赤ちゃん言葉によるストレス解消効果です。幼児語を発したりスキンシップを交わしたりする時間には、脳内で「絆ホルモン」と呼ばれるオキシトシンが活発に分泌されます。オキシトシンには血圧を安定させ、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制する働きが確認されています。つまり彼にとって赤ちゃん言葉を使う行為は、言語を超えた自律神経のクールダウン療法といえます。
さらに見逃せないのが、「無条件の承認欲求」という隠された本音です。「成果を出さなければ評価されない」という過酷な競争社会に身を置く彼氏ほど、「何者でもない無力な自分を受け入れてほしい」と願う傾向が強まります。幼い口調を用いることで、相手が自分を拒絶しないか、ありのままを包み込んでくれるかを無意識にテストしている側面もあるのです。