連載当時からファンの間で語り継がれてきたのが、「ブラックバードには実在するモデル車が存在する」という事実です。そのルーツは、1980年代から1990年代にかけて首都高・湾岸線で名を馳せた伝説の最高速チーム「Mid Night(ミッドナイトレーシングチーム)」の創設者兼会長である吉田栄一氏の愛車、通称「吉田スペシャル(吉田ポルシェ)」にあります。
吉田氏のポルシェは、ポルシェ930ターボをベースにドイツの名門チューナー・シュトロゼックやRUFのパーツを組み込み、最高出力600馬力オーバー、実測最高速度300km/h超を記録した伝説のマシンです。作者の楠みちはる氏は当時の首都高カルチャーを綿密に取材しており、漆黒のボディカラー、徹底した機能美、オーナーが持つストイックな哲学など、多くの要素が島達也とブラックバードに投影されました。
のちに製作された実写映画版『湾岸ミッドナイト THE MOVIE』などの現場関係者の証言によると、劇中撮影用車両にも実在のオートガレージTBK製エアロを装着した930型・964型ポルシェが用意され、CGに頼らないリアルな走行シーンが撮影されました。フィクションでありながら現実のストリートカルチャーの熱量をそのまま宿していたことこそ、ブラックバードが長年色褪せない理由です。