「弁膜症治療のガイドライン」改訂以降、国内の治療方針は大きく整理されました。最新の基準では、患者の実年齢だけでなく、フレイル(加齢による虚弱)の程度や他疾患(呼吸器疾患、腎機能障害、脳血管障害の既往など)を総合的に数値化し、ハートチームと呼ばれる循環器内科医・心臓血管外科医・麻酔科医・看護師・理学療法士の多職種協議によって治療法が決定されます。
現在、80歳以上の高齢患者に対しては原則としてTAVIが優先的に推奨される体制が確立しています。日本国内のレジストリ研究データによると、TAVIにおける手術成功率は約98%以上を誇り、80代後半や90代前半の超高齢者であっても周術期の合併症発生率は極めて低水準に抑えられています。
適応判断において重視されるのは、大腿動脈の血管径や石灰化の程度、冠動脈の開口部と弁の位置関係といった「解剖学的条件」と、術後に自力での生活復帰が見込めるかという「生活機能(ADL)」の2点です。かつてのように「90歳を超えているから手術は危険」と画一的に除外されることはなく、本人の全身状態が保たれていれば、90代であっても積極的に弁の再建が行われています。