病院という同一の建物内にあっても、一般病棟と療養病棟では医療機関としての役割が180度異なります。一般病棟は、急性心筋梗塞や脳卒中、手術を要する骨折など、発症直後で命の危機がある状態を脱するための「急性期医療」の現場です。検査や外科手術、集中的な投薬によって病状を早期に安定させることが最優先されます。
対する療養病棟は、急性期の治療を終えたものの、自宅や一般の介護施設へ戻るには医療的依存度が高すぎる慢性期の患者を受け入れる場所です。気管切開の管理、中心静脈栄養、頻回な喀痰吸引、酸素吸入など、日常的な医療処置を継続しながら療養生活を送ることを主眼としています。
両者の差が最も顕著に表れるのが、医療法および診療報酬で定められたスタッフの人員体制です。厚生労働省の基準において、一般的な急性期病棟では患者7人に対して看護師1人(7対1)や10人に対して1人(10対1)の手厚い配置が義務付けられています。一方、医療療養病棟における看護配置基準は患者20人に対して看護師1人(20対1)が基本原則です。その代わり、入浴や排泄、食事介助といった日常生活を支えるために、患者20人に対して1人の介護職員(看護補助者)の配置が義務付けられています。
ここで混同されやすいのが、かつての介護療養型医療施設からの転換が進んだ「介護医療院」との違いです。医療療養病棟が医療法上の病院として健康保険を使用するのに対し、介護医療院は介護保険法に基づく介護保険施設であり、法的には「生活の場」と位置づけられています。日常的な喀痰吸引や経管栄養に対応できる点は似ていますが、利用者の要介護認定の有無や契約形態、居住空間としての権利保障において明確に区別されています。