当手続の恩恵を最も切実に受けているのが、離婚後の養育費回収に直面するひとり親世帯です。厚生労働省のひとり親世帯調査等でも長年指摘されてきた通り、養育費の継続受給率は依然として3割前後に低迷しており、音信不通を口実に支払いを逃れる悪質な元配偶者が後を絶ちませんでした。
かつて当事者手記や法律相談の現場で繰り返されたのは、「元夫が転職して職場を隠し、実家からも居留守を使われて手の打ちようがない」「LINEをブロックされて終わりだった」という無力感に満ちた証言でした。しかし、民事執行法の改正以降、子どもの扶養義務等に関わる債権を持つ親は、地方自治体や日本年金機構に対する情報取得手続を通じて、逃亡した親の最新の勤務先を合法的に特定できる道が開かれたのです。
養育費未払いの根底には、日本社会における家族観の歪みや「離婚=親子関係の清算」と錯覚する当事者の未熟な心理的バウンダリー(境界線)の崩壊が存在します。子どもを育てる経済的責任を放棄する行為に対し、国家機関が保有する公的データを用いて強制的に勤務先と給与を把握する本制度は、親のモラルハザードに法的な鉄槌を下す極めて強力な社会インフラとして機能しています。