昭和から平成初期にかけて、芸能人が精神疾患を公にする行為は「プロ失格」「スキャンダル」としてネガティブに捉えられる風潮が支配的でした。しかし、なぜ2020年代以降、当事者自ら病名を明かすケースが急増しているのでしょうか。取材関係者やタレントの手記から浮かび上がるのは、単なる自己アピールではない、切実な防衛と連帯の意識です。
お笑い芸人やタレントが執筆する闘病記において頻出するのは、「不可解な活動停止やトラブルに対する理由を、自らの言葉で説明したい」という思いです。双極性障害を患っていると、気分の波によって突然のロケ不参加や約束の反故、周囲に対する攻撃的な振る舞いが生じてしまう局面があります。事実を伏せたままでは「怠慢」「人間性の破綻」と片付けられてしまう事態を、医学的な診断名を提示することで正当に説明し、社会的信用を回復するための手続きとして告白が機能しているのです。
SNSやオンラインコミュニティの反応を検証すると、有名人の告白に対して「あの完璧に見える人でも同じ苦しみの中にいたのか」「甘えだと思っていた家族の病気に理解が追いついた」といったポジティブな共感が広がっています。長年付きまとうスティグマ(社会的偏見)を打破し、現在進行形で孤立する当事者を救い出すアンバサダーとしての役割を、彼らの告白が果たしていると言えます。