小学校で広く普及している速さの公式の覚え方といえば、円を3つに区切って「道のり・速さ・時間」を配置した、いわゆる「みはじ(または「きはじ」)」の図です。「きはじ」は距離・速さ・時間を指し、「みはじ」は道のり・速さ・時間を指すだけで、両者の意味に本質的な違いはありません。しかし、近年の教育指導現場や算数学習の研究者からは、「みはじ」を使ってはいけない理由が強く主張されるようになっています。
最大の理由は、児童や学習者が「速さとは単位時間あたりに進む道のりである」という割合(内包量)の本質をまったく理解しないまま、単なるパズルゲームとして数値を穴埋めしてしまう点にあります。認知心理学の研究でも、形式的な手続きの暗記(道具的理解)は短期的な小テストを乗り切るには有効なものの、条件が少しでも変化した応用問題に直面した際、思考停止を引き起こす「認知の硬直化」を招くことが実証されています。
小学校5年生の算数における「速さ」の単元は、かけ算・わり算の集大成であり、分数の概念や比の考え方の土台となる最重要フェーズです。ここで「みはじ」に過度に依存してしまうと、「なぜ道のりを時間で割ると速さが出るのか」を直感的に捉えられず、中学数学の方程式や理科の物理分野(速度・加速度)へ進んだ段階で、深刻なつまずきを経験することになります。