日本最大級の医療Q&Aサイト『AskDoctors』や脳卒中患者家族のコミュニティには、夜間や当直医からの宣告を受けた直後の家族から、悲痛な相談が毎日のように寄せられています。
「主治医から『頭の中に大量の血が溢れ、脳室に破れ込んでいる。今夜が山場だ』と言われ、手の震えが止まらない」
「呼びかけにも全く応じず、人工呼吸器につながれたままピクリとも動かない。ここから本当に意識が戻るのか」
こうした生の投稿に共通するのは、CT画像で見せられた「真っ白に塗りつぶされた脳室」の視覚的インパクトによる絶望です。しかし、救急医療に携わる脳神経外科医の回答や現場での観察記録を紐解くと、医療者と家族の間には「意識回復への捉え方」に大きな時間差が存在することが分かります。
ある総合病院の脳神経外科専門医は、面談室での対話について次のように証言しています。
「急性期の最初の72時間は、脳浮腫(むくみ)がピークに達し、さらに鎮静薬や鎮痛薬を意図的に深く投与して脳を休ませています。そのため、家族の目には『昏睡状態で二度と目覚めない姿』に映ってしまいます。しかし、薬が抜けて脳圧が落ち着く2週目以降にようやく患者自身の真の反応が見え始めるのです。初日の無反応だけで生涯の意識回復を諦める必要は全くありません」
ICU待合室で張り詰めた時間を過ごすご家族の手記でも、発症から10日目、あるいは2週間を過ぎた頃に「手をぎゅっと握り返してくれた」「呼びかけると一瞬だけ目を開けた」という小さな反応を契機に、長いリハビリへの希望を取り戻した体験談が多く綴られています。