「元気がないから、とりあえず肥料を多めに与えておこう」という親切心からの判断が、致命的な枯死を招くケースが後を絶ちません。植物栽培における最大の落とし穴が「肥料焼け」と「窒素過剰障害」です。
肥料焼けが発生する主因は、土壌溶液の電気伝導度(EC値)の急激な上昇に伴う「浸透圧の逆転」です。通常、植物の根は内部の浸透圧を外土壌より高く保つことで水分を吸い上げています。ところが、根の直近に未分解の有機肥料や高濃度の化成肥料が多量に施されると、土壌中の塩類濃度が跳ね上がります。その結果、ナメクジに塩をかけた状態と同じ物理現象が地中で発生し、「根から水分が土壌側へ吸い出される脱水状態」に陥るのです。根の生長点は黒変して壊死し、葉の縁から急速に茶褐色へと枯れ込みます。
また、野菜栽培者を最も悩ませるのが、窒素の与えすぎによって引き起こされる「つるぼけ(樹ボケ)」です。窒素が過多になると、植物は果実作りの段階へ移行せず、茎葉の細胞分裂ばかりにエネルギーを費やします。トマトであれば主枝が極太になり、葉が内側へ丸まりながら異常に黒ずむ一方、花房がつかず、ついた花も受粉せずに落ちてしまいます。
さらに深刻なのは、土壌内における「ミネラルの拮抗作用」です。肥料設計の現場データを精査すると、カリウムを過剰に投入した圃場では、土壌中に十分なマグネシウム(苦土)やカルシウムが存在しているにもかかわらず、植物がそれらを吸えなくなる「吸収阻害」が多発しています。トマトの尻腐れ病や白菜の芯腐れ病は、カルシウム単体の欠乏だけでなく、過剰な窒素やカリウムが吸収をブロックした結果として頻発しているのが実態です。