なぜ折り返しのない薄手のニット帽が「ビーニー」と呼ばれるようになったのか、その由来は20世紀初頭のアメリカにまで遡ります。当時、英語のスラングで頭のことを「bean(豆)」と呼んでおり、頭にぴったりと沿う丸い帽子全般を指して「beanie」と呼ぶようになりました。
初期のビーニーは編み物に限らず、フェルト生地を三角に裁断して頭頂部でボタン留めした作業帽や、大学の新入生がかぶるスクールキャップを指していました。ツバが邪魔にならない実用的な帽子として、工場労働者や溶接工の間で普及した歴史があります。これがやがてニット素材へ応用され、現代の「装飾を削ぎ落としたシンプルな丸型ニット帽」へと定着していきました。
対照的なルーツを持つのが「ワッチキャップ」です。こちらは英国海軍や米海軍の兵士が甲板で見張り(Watch)を行う際、過酷な寒気や強風から身を守るために支給されたミリタリー防寒具が原点です。耳元を二重に保護して防寒性を高めるため、裾を折り返す構造が標準仕様となりました。労働現場から生まれたビーニーと、軍用防寒具から生まれたワッチキャップ。両者の生い立ちを知ると、シルエットやディテールが異なる理由が明白になります。