映画やアニメーションの影響を受け、「野性的な狼犬を飼い慣らしたい」と憧れを抱く愛犬家は少なくありません。しかし、現場のブリーダーや保護活動団体が証言するウルフドッグの飼い方の実態は、一般的なペットライフとはかけ離れた過酷な現実を突きつけています。
ウルフドッグと呼ばれる個体群、とりわけオオカミの血統含有率(ウルフパーセンテージ)が50%を超えるハイコンテンツの個体は、犬の常識が通用しません。彼らの根底にあるのは、オオカミ特有の「異常なまでの警戒心」と「強大な破壊力」です。環境のわずかな変化、聞き慣れない金属音、見知らぬ訪問者の気配に対してパニックを起こし、一般的な犬用ケージを噛み砕いて破壊する力を持っています。
日本国内でも、過去に輸入された大型ウルフドッグの脱走事案や、家族・近隣住民への咬傷事故が報道各社によって度々報じられてきました。こうした狼犬の危険性と事故の教訓を受け、一部の自治体では条例により、ウルフドッグを「特定動物」に準ずる危険動物として厳重な管理を義務付ける動きが定着しています。具体的には、床面をコンクリートで固め、跳躍による脱走を防ぐために天井まで網で覆った高さ2メートル以上の強固な飼育檻の設置が求められます。
関東地方で長年ウルフドッグと暮らすベテラン飼育者は、専門誌の取材に対して次のように生の体験を語っています。
「普通の大型犬のように『お座り』や『待て』で完全にコントロールできると思ったら大間違いです。彼らは人間をリーダーとして盲従するのではなく、対等な群れのメンバーとして観察しています。少しでもこちらが動揺や恐怖を見せれば、関係性は一瞬で崩れる。年間を通して旅行はおろか、1日家を空けることすら許されない覚悟がなければ、最終的に待っているのは家庭崩壊か悲惨な咬傷事故です」
見た目の格好良さや優越感を満たすためにウルフドッグを安易に迎え入れた結果、制御不能に陥って飼育放棄されるケースは後を絶ちません。野生の遺伝子を家庭に持ち込むことの重圧は、生半可な知識で耐えられるものではないのです。