メディアでセンセーショナルに報じられる「ベトナム人実習生の失踪急増」というニュース。出入国在留管理庁のデータでも、年間の実習生失踪者のうち約半数から6割近くをベトナム人が占める状況が続いています。なぜ彼らは突如として寮から姿を消し、不法滞在のリスクを冒すのでしょうか。 その根本原因は、個人の倫理観ではなく、構造化された「莫大な初期費用の借金」にあります。 ベトナム現地法上、海外派遣労働者から徴収できる手数料の上限は厳格に定められています。しかし現実には、現地の送り出し機関や内陸部の農村を駆け回るサブブローカーが、「教育費」「保証金」「手配料」などの名目で80万〜120万円相当の手数料を実習生本人に請求するケースが後を絶ちません。ベトナム農村部の平均月収が3万〜4万円程度であることを考えると、これは世帯年収の数年分に匹敵する天文学的な負債です。彼らは自宅の土地や家保証を担保に銀行や親族、時には高利貸しから借金をして来日します。 「毎月5万〜7万円を国へ送金して借金を返さなければ、実家の土地が差し押さえられて家族が路頭に迷う」 この極限状態のなかで、もし受入れ先の工場や農家で「残業代が支払われない」「月給の手取りが10万円前後に落ち込む」「激しいパワハラを受ける」といった事態に直面したらどうなるでしょうか。従来の制度では原則として「実習先の変更(転籍)」が認められていませんでした。合法的に会社を辞めて他社で働く道が塞がれていたため、彼らに残された選択肢は「耐えて借金苦に沈む」か「逃げ出して不法就労でも高時給の現場へ走る」かの二者択一だったのです。 そこに甘い言葉で忍び寄るのが、Facebookなどのベトナム人コミュニティに巣食う悪質ブローカーの存在です。「もっと稼げる建設現場がある」「月給30万円保証、手数料前払い不要」という投稿に誘導され、実習生は正規の在留資格を捨ててアンダーグラウンドへと引きずり込まれていきます。失踪問題の本質は、個人の身勝手ではなく、制度的な転籍制限と渡航前の中間搾取が生み出した人道的リスクなのです。
ベトナム人技能実習生が激変?失踪の真相と育成就労への大転換
•
•
1分で読める