ネット上やSNSで毎年叫ばれる「福岡国際マラソンの日は車を出したら完全に詰む」という噂。この言説は決して大げさな都市伝説ではありません。福岡市の都市構造を地理学・交通工学の視点から分析すると、なぜこれほどまでに破滅的な渋滞が発生するのか、その構造的必然性が浮かび上がってきます。
福岡市は北側を博多湾、南側を油山などの山に挟まれた「東西に細長い砂時計型」の地形をしています。東区・糟屋郡方面から中央区・早良区方面へ抜ける幹線道路は、事実上「明治通り」「昭和通り」「国道3号線」「福岡都市高速」の数本しか存在しません。マラソンコースはその心臓部である明治通りと国道3号線を真っ二つに横断するため、都市の東西動脈が物理的に切断されることになります。
これにより生じるのが、激甚な天神博多間交通影響です。東西の主軸を失った一般車両は、規制を免れた南側の「国体道路」「住吉通り」「城南線」へと一斉に雪崩れ込みます。しかし、これらの道路は平常時ですら飽和状態にあるため、流入した迂回車両によって数キロに及ぶテールランプの列が形成され、通過に通常の3倍から5倍以上の時間を要する事態に陥ります。
さらに事態を決定づけるのが、公共交通機関への波及です。福岡都市圏の動脈である西鉄バス運休迂回運行により、天神・博多駅を発着する主要系統が大幅なダイヤ乱れや部分運休を余儀なくされます。普段バスを利用している市民や観光客がタクシーや自家用車へ流れる負の連鎖が起き、交差点ごとにデッドロック(交差点内での立ち往生)が頻発するのです。