料理研究機関や各種レシピ実証データにおいて、最も評価の高い色鮮やかに仕上げる茹で方の基本は、弱アルカリ性の熱湯で一気に熱を通す工程にあります。食用重曹(炭酸水素ナトリウム)を微量加えることで、お湯が弱アルカリ性に傾き、クロロフィルの加水分解によって鮮明な緑色を呈する「クロロフィリン」が生成されます。同時に植物の硬い繊維が軟化し、内部のエグみ成分が素早く湯中へ溶出します。
プロの現場で厳守されている失敗しないアク抜きの手順は以下の通りです。
1. 徹底的な水洗いと選別:
ボウルにたっぷりの水を張り、振り洗いを3回以上繰り返して土埃や枯葉、ゴミを完全に落とします。茎の根元が硬い場合は、指でポキッと折れる柔らかい部分だけを残し、硬い木質部は迷わず切り落とします。
2. 重曹の計量と沸騰:
大きな鍋にたっぷりの湯を沸かします。水量はよもぎがゆったりと泳ぐ「よもぎの重量の約4〜5倍(100gに対して1Lが目安)」を確保してください。沸騰したら、湯1Lに対して小さじ1/2〜1(約2〜3g)の重曹を投入します。過剰に入れると苦味や薬品臭が残り、葉が溶けるため厳密に計量します。
3. 厳格な茹で時間の管理:
沸騰した湯によもぎを一気に投入し、菜箸で素早く沈めます。タイマーで測定するよもぎのゆで時間の基準は、早春の非常に柔らかい新芽であれば約1分、葉がしっかり成長した時期のものでも1分30秒〜最長2分です。長時間の茹で過ぎは風味の完全な喪失を招きます。
4. 氷水での急冷と水晒し:
茹で上がったら間髪入れずにザルへ引き上げ、あらかじめ用意しておいた氷水(または流水)に浸して一気に熱を取ります。急速冷却によって余熱による変色を完全に食い止めます。その後、冷水を2〜3回入れ替えながら、20分〜30分程度水にさらすことで、溶出したアクを完全に洗い流します。
なお、天ぷらやおひたし用で「どうしても薬品を使いたくない」という場合には、重曹なしで茹でる方法も選択肢に入ります。その際は、湯1Lに対して食塩小さじ1を投入し、沸騰状態で1分〜1分半茹で上げた後、水に晒す時間を1時間〜2時間程度へと長めに設定します。塩分がクロロフィルの分解をある程度抑制しますが、草餅用などの濃密な緑色を定着させたい用途においては、重曹を使用した仕上がりに軍配が上がります。