インターネット上の学習コミュニティやSNSで散見される科学的な誤認のなかで、特に根深い2つの盲点を是正しておかなければなりません。
誤解1:「温度を上げれば、どんな物質でも水によく溶けるようになる」
固体の多くは吸熱的に溶解するため温度上昇によって溶解度が増加しますが、例外は確実に存在します。例えば水酸化カルシウム(消石灰)や硫酸セリウムなどの物質は、水に溶ける際に熱を放出する発熱反応を示すため、温度が高くなるほど水に溶けにくくなるという逆転現象を起こします。また、気体(二酸化炭素や酸素など)の水に対する溶解度も、加熱によって分子運動が激しくなり水中から逃げ出してしまうため、温度上昇に伴い著しく低下します。
誤解2:「再結晶を行えば、どんな混合物でも100%純粋な結晶を取り出せる」
再結晶の仕組みは、不純物と目的物質の溶解度差を利用して分離・精製する極めて優れた手法ですが、完全無欠ではありません。析出してきた結晶の格子内部に母液(溶媒)が気泡として閉じ込められる「包蔵」や、結晶表面に不純物が吸着する現象は避けられません。化学工場や医薬品開発の現場では、再結晶操作を3回〜5回と繰り返し、洗浄溶媒の温度管理をミリ単位で最適化することで、初めて99.99%以上の高純度を実現しています。