固定資産の簿価を理解する上で外せないのが「減価償却」です。事業で使用するパソコン、営業車、機械設備、建物などの固定資産は、時間の経過や使用に伴って価値が減少します。そのため、購入費全額をその年の経費にするのではなく、法定耐用年数にわたって分割して費用計上していきます。
簿価の計算方法の基本構造は極めてシンプルです。
【簿価 = 取得原価 - 減価償却累計額】
例えば、30万円で購入したパソコン(耐用年数4年・定額法・償却率0.250)の場合、毎年7万5,000円ずつ減価償却費として経費化されます。1年目の期末簿価は22万5,000円、2年目は15万円、3年目は7万5,000円と減少し、4年目の最終年度を迎えます。
ここで多くの人が疑問に抱くのが、「なぜ耐用年数を過ぎても簿価を0円にせず、1円だけ帳簿に残すのか」という実務慣行です。この1円は会計用語で「備忘価額(びぼうかがく)」と呼ばれます。
備忘価額を残す理由は、「その資産が会社に現物として現存していることを帳簿上で証明し続けるため」に他なりません。もし簿価を0円にして台帳から完全に消去してしまうと、オフィスにデスクやパソコンが存在しているにもかかわらず、固定資産台帳や貸借対照表から姿を消してしまいます。これでは備品の横領、無断廃棄、二重購入などの不正や管理ミスを誘発しかねません。
かつて日本の税制では「残存簿価5%」までしか償却できない仕組みでしたが、2007年度(平成19年度)の税制改正によって抜本的に見直され、耐用年数経過後は1円の備忘価額を残して99.9%以上を経費化できるようになりました。現役で稼働している限りは「簿価1円」として台帳に留め、最終的に廃棄・売却した時点で除却損を計上し、初めて帳簿から完全に姿を消すのが正しい経理処理です。