円を3分割し、上に「み(道のり)」、左下に「は(速さ)」、右下に「じ(時間)」を配置するみはじの法則の覚え方(または「はじき」)は、昭和から平成、そして令和に至るまで学校や補習塾で広く伝承されてきました。隠した部分を求める計算式が視覚的に浮かび上がるため、導入期の即効性は抜群です。しかし、2026年現在の難関中学受験指導や学習塾の現場では、この「はじき」に対する過度な依存が強い警鐘を鳴らされています。
都内の難関中学受験塾で指導にあたるベテラン講師は、取材に対して次のような現場の実態を明かしました。
「テストで空欄の『はじき』マークを問題用紙に殴り書きし、問題文に出てきた数字を脈絡なく空いている枠に当てはめる生徒が後を絶ちません。単位が『分』と『時間』でズレていようが、時速と秒速が混ざっていようがお構いなしです。本人は公式を使っているつもりでも、実際は思考停止の当て推量に過ぎず、少し捻られた文章題になると手も足も出なくなります」
現場観察から見えてきた「はじき」依存の3大トラップは以下の通りです。
1. 単位の不一致を見落とす:時速80kmで15分進む問題で、平然と「80×15=1200km」と誤答する。
2. 逆算思考が育たない:公式の形だけを借りるため、「なぜその計算になるのか」という数量感覚(ナンセンスセンス)が失われる。
3. 複数ステップの複合問題に対応できない:途中で速さが変わる問題や旅人算において、全体を1つの「はじき」に無理やり押し込んで自滅する。
「はじき」はあくまでも初期の忘備録に過ぎず、概念を理解した生徒にとっては不要な補助輪です。速さの求め方を小学生の算数として定着させるには、「はじき」を描かせるのではなく、線分図を用いて「1時間でこれだけ進むなら、3時間では何倍進むか」という比例関係で捉えさせるアプローチが求められます。