弔辞の中では、二人の政治的運命を決定づけた極めてプライベートな回想も明かされました。2012年、下野していた自民党の総裁選への出馬を躊躇していた安倍氏を、菅氏が銀座の焼鳥屋で口説き落とした夜のエピソードです。
「日本武道館の演壇から、あの夜の光景を思い返していました」と語った菅氏。第1次政権の挫折で心身ともに傷つき、再登板に慎重だった安倍氏に対し、菅氏は「あなたこそが日本を立て直すリーダーだ」と何時間も説得を続けました。あの夜の決断がなければ、その後のアベノミクスも、安定した長期政権も存在していませんでした。
「私はそのことを、ただの一度も後悔したことはありません」と言い切った菅氏の告白は、単なる同僚政治家を超えた、命を預け合った二人の特別な関係性を雄弁に物語っていました。