エリクソンが提唱した心理社会的発達理論は、精神分析の祖であるフロイトの性愛発達論を発展させ、人間関係や社会文化的な関わりを成長の軸に据えたエリクソンライフサイクル論として知られています。フロイトが思春期までの発達を重視したのに対し、エリクソンは「人は生涯を通じて発達し続ける」という画期的な生涯発達の視点を提示しました。
この理論の根幹にあるのが漸成説(ぜんせいせつ)と呼ばれる考え方です。植物が種から芽を出し、茎を伸ばして花を咲かせるように、人間の心もあらかじめプログラムされた設計図に沿って段階的に成熟していくと捉えます。各段階には固有の対立するテーマ(例:信頼 対 不信)が存在し、これを心理的危機と呼びます。
エリクソンが言う「危機」とは決して破滅的な破綻ではなく、人間的成長のための「好機と脆弱性が共存する転換点」を意味します。肯定的な要素と否定的な要素のバランスを取りながら葛藤を乗り越えることで、その年代に必要な心理的活力(徳 / 普遍的な強み)が獲得されていきます。