もじゃこの生態を語る上で欠かせないのが「流れ藻(ながれも)」の存在です。春先になると、沿岸の岩場からちぎれたホンダワラやアカモクなどの海藻類が黒潮や対馬海流に乗って広大な沖合を漂流します。この流れ藻の塊は、外洋という過酷な環境において多様な生物が集まる「海のオアシス」として機能しています。
遊泳力の弱いもじゃこにとって、流れ藻は外敵である大型回遊魚や海鳥の視線から身を隠す天然のシェルター(隠れ家)です。同時に、海藻の周囲にはアミ類や小型甲殻類などの動物プランクトンが豊富に集まるため、稚魚期の貴重な給餌場としても完璧な役割を果たしています。
もじゃこは単に藻の周りを泳ぐだけでなく、外敵が近づくと海藻の隙間に器用に潜り込み、自らの体色を海藻の葉や茎と同化させて難を逃れます。体長が10〜15cm程度に育ち、自力で群れを形成して高速遊泳できるようになると、自発的に流れ藻を離れて沿岸域や岩礁帯へと旅立っていきます。自然界の物理的ゆりかごを活用した、極めて合理的かつ緻密な生存戦略といえます。