ピエール瀧という存在自体、ポピュラー音楽界における稀有なイノベーションと言える。バンド内で楽器を奏でるわけでもなく、歌を本格的に歌うわけでもない。担当パートは「瀧」。彼がステージ上で担当しているのは、演奏ではなく「空気」であり「熱量」そのものだ。馬の着ぐるみを装着し、巨大なハリボテを振り回す行為は、音楽における演劇性やパフォーマンスアートの極致だ。
80年代のニューウェイヴやパンクロック、そして日本のインディーズシーンが持っていた「初期衝動」を、現代的なエンターテインメントへと昇華させた。観客は彼が次に何を仕掛けてくるのかというスリルを楽しみに会場へと足を運ぶ。馬の姿でステージを駆け抜けるアクションは、抽象的なテクノミュージックを誰にでも直感的に理解できる爆発的な娯楽へと翻訳する、最高級の通訳でもあった。