谷沢川に沿って整備された遊歩道の全長は約1km。往復するだけであれば30分程度ですが、等々力渓谷の真価は散策路沿いに点在する歴史遺構や庭園、茶房での休息にあります。標準的な見学所要時間は全体で約1時間〜1時間30分を見込んでおくと、ゆったりとした時間を過ごせます。
ゴルフ橋の下からスタートし、川のせせらぎを聞きながら下流へ向かうと、右手にうっそうとした竹林が広がり、その先には昭和40年代に作庭された「日本庭園と書院」が姿を現します。手入れの行き届いた枯山水や季節の草花を眺めながら書院の縁側に腰を下ろすひと時は、ここが世田谷区内であることを完全に忘れさせてくれます。
遊歩道をさらに進むと、苔むした岩肌から清水が滴り落ちる「不動の瀧(ふどうのたき)」に到達します。平安時代、興教大師覚鑁(かくばん)の夢枕に不動明王が現れたことから開創されたと伝わる霊場で、「轟く(とどろく)ように水が落ちていた」ことが「等々力」の地名発祥とされています。現在も滝行の場としての静謐な空気が漂っています。
この不動の瀧のすぐそばに佇むのが、散策のハイライトである名物甘味処「雪月花(せつげつか)」です。谷沢川のせせらぎと瀧の音を耳にしながらいただく「葛餅(くずもち)」や「お抹茶」「クリームあんみつ」は格別で、散策で程よく疲れた身体を優しく癒やしてくれます。週末のティータイムには列ができる人気スポットです。
滝の脇に伸びる長い石段を登りきると、台地上に鎮座するのが満願寺の別院である「等々力不動尊」の本堂です。春には見事な桜、秋には燃えるような紅葉が崖線を彩り、境内木造の見晴台からは渓谷の深い緑を一望するパノラマが広がります。参拝を終えた後は、環八通り方面へ抜けてバスに乗ることも、再び遊歩道を辿って等々力駅へ戻ることも可能です。