なぜ風向きひとつで部屋の快適性と光熱費がここまで激変するのか。その理由は、空気の重さと温度が織りなす「熱力学の絶対法則」にあります。空気は温度が下がると密度が高くなって重くなり床付近へ沈み込み、温度が上がると密度が小さくなって軽くなり天井付近へ上昇する性質を持っています。
ここで冷房運転時に風向きを下向きにしてしまうと、吹き出された重く冷たい空気は上昇することなく、エアコン真下や足元ばかりに滞留します。すると利用者は「部屋がなかなか冷えない」と感じてリモコンの設定温度をさらに1〜2度下げてしまい、コンプレッサーに過大な負荷を強いて消費電力を約10〜15%も余分に浪費させる悪循環に陥るのです。逆に風向きを水平(または最上部)に設定すれば、部屋の天井伝いに前方の壁まで冷気が押し出され、天井から部屋全体へシャワーのようにゆっくり冷気が降り注ぐため、ムラなく全体を素早く冷やせます。
一方で、暖房運転時に風向きを水平や上向きにしてしまうミスはさらに深刻です。軽い暖気は天井付近に完全に閉じ込められ、人間がくつろぐ床上30〜50cmの生活スペースは底冷えしたままになります。さらに厄介なのは、壁の高い位置にあるエアコン本体内部の温度センサーが「部屋はすでに十分暖まった」と誤認してパワーを弱めてしまい、足元は極寒なのに機械はサボり始める現象です。「冷房は水平、暖房は下向き」の徹底は、快適性だけでなく省エネにおける不可侵の鉄則と言えます。