カルピスを語る上で欠かせないのが、日本広告史に燦然と輝く名フレーズだ。1922(大正11)年、新聞広告に登場した「初恋の味」キャッチコピーは、当時の社会に鮮烈な衝撃を与えた。「初恋」という甘酸っぱく、少し恥じらいを伴う言葉を公の広告に使用することに対しては、社内からも大きな異論が相次いだという。
だが、三島海雲はこの表現を強く推し進めた。甘さと酸っぱさが織りなす独特の風味と、誰もが心の奥底に秘める純粋な記憶。この二つが見事に重なり合い、商品価値は爆発的に高まった。モダンな都市文化が花開いた大正ロマンの風潮とも共鳴し、カルピスは文化的なアイコンへと昇華したのである。