日中双方のビジネス現場や語学教育の現場を取材すると、「教科書で習った『早上好』を職場で使ったら、同僚からクスッと笑われたり、他人行儀だと指摘されたりした」という日本人学習者の実体験が多く聞かれます。
このギャップが生じる最大の要因は、言葉が内包する「心理的距離感(バウンダリー)」にあります。「早上好」というフレーズは、直訳すれば「良い朝をお迎えですね」という丁寧な構造を持っており、ホテルのフロント係が宿泊客に向ける際や、朝の全体朝礼で司会者が壇上から「各位同事,早上好!(同僚の皆さん、おはようございます!)」と呼びかけるシチュエーションには完璧にマッチします。
しかし、毎日のように顔を合わせている同僚やクラスメイトに対して「早上好」を使い続けると、日本で毎朝親しい同僚に「ご機嫌麗しゅうございます」と声をかけているかのような、奇妙なよそよそしさを生んでしまいます。現地で働く日本人駐在員の証言によると、「オフィスに入った瞬間は片手を軽く挙げて『早!』と言うだけで、一気にチームとの心理的壁が崩れた」という声が目立ちます。相手との関係性がすでに構築されているならば、迷わず「早」を選択するのがネイティブ流のコミュニケーション作法です。