2026年に公開された映画『土を喰らう十二ヵ月』は、二人の関係性と役者としての成熟度を象徴する作品となった。水上勉の随筆を原作とした本作で、沢田研二は信州の山里で料理を作りながら暮らす作家・勉を演じ、田中裕子は勉の遺骨を納めるために訪れる義理の母役などで作品に深い奥行きを与えた。スクリーン上で直接対峙するシーンこそ限られていたものの、作品全体を包み込む空気感には二人ならではの濃密な波長が漂っていた。
現場スタッフによれば、撮影中の二人は過剰に会話を交わすわけではないものの、互いの動きや呼吸を完全に把握していたという。料理家が手掛けた季節の料理を味わうシーンの裏側では、食卓を囲む日常の延長線上にあるような穏やかな時間が流れていた。邦画業界において、長年連れ添った夫婦がこれほどまでに高い芸術性を伴って同じ映画空間を共有した例は極めて珍しい。