普段何気なく行っている「輪っかを同じ向きに重ねていく巻き方」は、専門用語で「順巻き(じゅんまき)」と呼ばれます。この順巻きこそが、ケーブルトラブルを生み出す最大の温床です。
ケーブルを同じ方向に1回巻くごとに、内部の芯線には「360度のねじれモーメント」が加わります。10回巻けば3600度、つまり10回転分の強烈なねじれが外皮と導線の内部に閉じ込められることになります。この状態で束を解こうと端を引っ張ると、内部のねじれが一気に解放されようとして反発し、輪が小さく締まって結び目(キンク)が形成されます。
音響現場のPAエンジニアや舞台照明のスタッフへの取材でも、「現場で順巻きをすると怒声が飛ぶ」という声は少なくありません。順巻きを繰り返すと、内部の撚り線(銅線)が不均一に引っ張られて金属疲労を起こし、わずか数ヶ月で芯線の一部が破断してノイズ混入や接触不良、最悪の場合は完全な断線に至るからです。
対照的に、「八の字巻き」は1周ごとにねじれの向きを「正回転(順手)」と「逆回転(逆手)」で交互に入れ替える構造を持っています。時計回りのねじれと反時計回りのねじれが1対1で打ち消し合うため、束全体にかかるトータルのねじれ量は常にゼロ(±0度)に保たれます。これが、八の字巻きが「絶対に絡まない」と称される物理的根拠です。