「大水滸伝全51巻は少しハードルが高い」と感じる読者に向けて、まず手を取るべき傑作をジャンル別に整理します。
歴史大河の入門編としては、『三国志』(全13巻)が筆頭に挙げられます。吉川英治文学賞を受賞した本作は、曹操の鋭敏な政治手腕や知将・諸葛亮の孤独、張飛の繊細な内面までが北方節で生々しく彫り込まれています。「無駄死にする兵士は一人もいない」という著者の哲学が貫かれており、全13巻という大長編でありながら息もつかせぬスピードで疾走できます。
純粋なハードボイルドを味わいたいなら、初期の代表作『眠りなき夜』や『檻』がベストです。都会の闇に沈みながら、己の誇りだけを手放さない主人公たちの眼差しは、時代を経ても眩い緊張感を帯びています。
また、南北朝の英雄・北畠顕家を描いて柴田錬三郎賞を受けた『破軍の星』や、若き日のチンギス・カンの勃興を描く『チンギス紀』も、濃密な歴史劇を愛する読者にとって至高の読書体験を約束する一冊です。