日本における体操カルチャーの地殻変動を語るうえで、映像メディアの影響は見逃せない。歴史に名を刻んだ内村航平の端正な演技や、白井健三が魅せた異次元のひねり技。それらはかつて「異世界の超人たちによる神業」としてテレビ画面の向こう側にあった。だが、パリオリンピック体操競技での日本代表の激闘が記憶に新しい中、SNSや動画プラットフォームが一般人と体操競技の距離を一気に縮めた。
火付け役となったのはYouTubeの解説動画や、人気番組『SASUKE』に挑むプレイヤーたちのトレーニング風景だ。プロのアクロバットパフォーマーや元体操選手が「バク転の物理的原理」や「身体操作のコツ」を論理的かつ分かりやすく発信。視聴者は「自分にもできるのではないか」という確信を抱き始めた。見るだけのエンターテインメントから、自らの身体で再現する体験型スポーツへ。大人の器械体操ブームは、デジタル空間での種まきを経て一気に花開いた。