一般の消費者に「どちらが先に発売されたか」を尋ねると、棚で見かける機会の多いチョコパイを元祖だと誤認しているケースが少なくありません。しかし歴史的事実を紐解くと、パイオニアは森永製菓のエンゼルパイです。
森永製菓がエンゼルパイを発売したのは1961年(昭和36年)のことでした。当時の開発担当者がアメリカ視察の際に出会った現地の伝統菓子「ムーンパイ」に着想を得て、日本人の口に合うよう繊細なビスケットとマシュマロの組み合わせで完成させました。当時はまだチョコレート自体が高価な嗜好品であり、エンゼルパイは贈答用や特別な日の高級洋菓子として一世を風靡しました。
これに対し、ロッテがチョコパイを投入したのは1983年(昭和58年)です。エンゼルパイの登場から実に22年後の後発商品でした。しかしロッテは「家庭で手軽に食べられる生ケーキ」という明確なポジショニングを打ち出し、しっとりとしたスポンジ生地と洋酒を効かせたバニラクリームという独自の路線を確立。昭和末期から平成にかけてのファミリーパック市場の拡大期に流通を席巻し、元祖の認知を塗り替えるほどの国民的メガブランドへと登りつめた背景があります。