小網代の森が「奇跡の自然」と称される最大の理由は、源流域の森林から中流の湿地・ヨシ原、そして河口の干潟と海(小網代湾)に至るまでの約70ヘクタールの流域全体がひと続きの自然環境として保全されている点にあります。日本国内の都市近郊河川の多くは護岸工事や宅地開発によって分断されていますが、小網代の森には人工的なコンクリート護岸が一切存在しません。
神奈川県および市民団体(NPO法人小網代野外活動調整会議など)の長年にわたる保全活動によって守られてきたこの地には、2,000種を超える多様な動植物が生息しています。森の上流部にあたる「引橋口」から足を踏み入れ、「えのき谷」の清らかな湧水流をたどり、視界が開ける「やなぎ原」の湿地帯を抜けると、やがて広大な「小網代湾の干潟」へと到達します。標高差約60メートルの高低差を歩くだけで、森林生態系から海洋生態系へと滑らかにつながる自然のグラデーションを肌で感じることができます。