海江田が凶弾に倒れた後、物語のバトンを受け取ったのはディーゼル潜水艦「たつなみ」の艦長として海江田を追い続けた深町洋でした。沈黙の艦隊における深町洋のその後は、本作のテーマを具現化する上で極めて象徴的に描かれています。
海江田の死後、国際社会は彼の遺言ともいえる提案を受け入れ、各国首脳の調印によって国連直属の超国家軍が正式に組織されます。その初代平和維持軍潜水艦部隊の指揮官(司令官)として招聘されたのが深町でした。直情径行で人間味にあふれ、常に「一人の命も犠牲にしない」ことを信条としていた深町が、冷徹な論理で突き進んだ海江田の思想を現実の海で守護する立場に就く構成は、読者に深い余韻を残しました。
一方、激戦を生き延びた原子力潜水艦「やまと」の結末もまた胸を打ちます。副艦長の山中をはじめとする乗組員たちは、国家への反逆者という汚名を返上し、世界平和を担保する実動部隊のコアメンバーとしてその任務を継続。自らの国家を捨て、地球市民としての防人となった彼らの姿こそ、かわぐちかいじ氏が描きたかった「国民国家の先にある希望」でした。