学生が最もペンを止め、教員からの赤ペンが集中するパートが「A(Assessment:アセスメント)」です。実習生のノートを分析すると、集めたS・O情報をただ文章で繋ぎ直しただけの「状況説明」や、「患者さんは辛いと思ったので声かけをした」といった「看護師の感想文」にとどまっているケースが目立ちます。
看護過程 SOAP 展開方法におけるアセスメントの本質は、「集めたS・O情報を、解剖生理・病態生理・治療経過・患者背景の4点に照らし合わせて分析し、何が問題で今後どう変化するかを予測すること」です。指導者に納得感を与えるアセスメントを書くには、以下の【3段ロジック】を固定テンプレートとして用いるのが有効です。
【アセスメント作成の3段ロジック】
1. 【現状の解釈】:S・Oから、患者の身体・精神状態はどうなっているか?
2. 【要因・根拠の分析】:なぜその状態が起きているのか?(病態生理や治療の影響)
3. 【今後の予測と看護課題】:放置すると何が起きるか? 看護師として今何をすべきか?
実践に役立つSOAP アセスメント 例文集
以下に、実習現場で遭遇頻度が高い2つの代表的場面における看護記録 SOAP 例文を提示します。看護診断 SOAP アセスメントの連動を意識して確認してください。
【事例1:周術期/術後1日目の離床支援と疼痛管理】
S:「歩く練習をしたいけれど、お腹の傷が引きつるように痛くて立ち上がるのが怖い」
O:開腹胆嚢摘出術後1日目。安静時NRS 2/10、体動時NRS 6/10。離床時に腹部を前屈させ緊張した表情。バイタルサイン:BP 132/78、HR 76、SpO2 98%(room air)。創部ガーゼに浸出液・出血なし。
A:術後1日目であり、創部離開や出血等の異常徴候は認められない。しかし、腹壁切開による急性疼痛が体動時に増強しており、これが精神的不安と重なって早期離床への阻害因子となっている。早期離床の遅れは無気肺や深部静脈血栓症(DVT)などの術後合併症のリスクを高める。したがって、離床施行30分前の予防的鎮痛薬使用について医師と連携し、腹部を支持する起き上がり動作の工夫を指導することで、疼痛と不安を最小限に抑えた離床の推進が必要である。
P:
・OP(観察計画):離床前後のバイタルサイン、体動時NRS、創部浸出液の有無、呼吸音(無気肺の兆候)。
・TP(ケア計画):離床計画に合わせた鎮痛薬投与のタイミング調整。腹部用クッションを用いた創部圧迫法の介助。
・EP(教育計画):腹部をかばいながら痛みを軽減する起き上がり動作の指導。「痛みを我慢せず伝えて良い」旨の心理的支援。
【事例2:老年看護/入院環境変化に伴う転倒・転落リスク】
S:「夜中にトイレに行こうとしたら、家のトイレと場所が違っていて足元がふらついた」
O:82歳、大腿骨頸部骨折保存療法中。日中は歩行器自立レベル。夜間帯(2時頃)にナースコールを押さず独力でベッドサイドに立ち上がっていたところを夜勤帯看護師が発見。居室照度50lx。履物は踵保持のないスリッパを着用。
A:骨折部位の骨癒合は進んでいるものの、夜間の暗環境と入院による環境変化(見当識の軽微な低下)が影響し、自己判断による単独移動が発生している。下肢筋力の低下および不適切な履物(スリッパ)の使用が重なっており、夜間転倒による再骨折や骨折部転位のリスクが極めて高い状態にある。昼夜の環境整備と安全な排泄行動の確立が急務である。
P:
・OP:夜間の覚醒・排泄パターン、歩行時のふらつき、足指・足底の接地状態。
・TP:足元灯の点灯およびベッド周囲のコード類の整理。踵がホールドされるリハビリシューズへの変更提案。
・EP:夜間排泄時のナースコール使用の必要性について、患者の自尊心に配慮しながら説明・再確認。