「StaRt」の歌詞(ふりがなを追うだけでもリズミカルな言葉遊びが満載)を丁寧に読み解くと、一般的なデビュー曲のクリシェである「夢に向かって羽ばたこう」といった無責任なポジティビティとは一線を画すフレーズが随所に散りばめられています。
特にリスナーに衝撃を与え続けているのが、Aメロから飛び出す次のようなフレーズです。
「幸せな時間をどれだけ過ごせるかは 微妙だ」「産まれてきた意味を探すのは 疲れた」
きらびやかなファンファーレとともに始まる楽曲の冒頭で歌われるのは、幸福への冷めた諦念と、存在意義の探求に対する率直な疲労感です。思春期特有のアイデンティティクライシスを抱える若者にとって、「生きる意味を探せ」という社会的な押し付けは時に猛毒となります。大森元貴はその欺瞞を鮮やかに切り捨て、「意味なんて探さなくても、今ここに在るだけでいい」という救済を逆説的に提示しているのです。
さらに歌詞は中盤、対人関係の核心へと踏み込みます。
「独りじゃないと否定をしてくれる貴方を要している」
「喧嘩しようぜ 乾杯しようぜ」「なぁなぁにしちゃおうぜ」
孤独を完全に克服することなどできず、誰かに「独りじゃない」と言ってもらわなければ自我を保てない人間の弱さ。そして、表面上の綺麗事な友情ではなく、ぶつかり合い(喧嘩)も妥協(なぁなぁ)も含めて丸ごと受け入れる泥臭い関係性の肯定。この強烈なメッセージ性こそが、「StaRt」が10年以上の時を経ても色褪せない最大の要因です。