日本循環器学会等の学術報告や臨床現場の事故事例によると、十二誘導心電図の記録エラーの約半数は電極の付け間違いや解剖学的ランドマークの誤認に起因しています。
代表的な誤りが「左右上肢電極の逆転(赤と黄の付け替え)」です。これを起こすと、Ⅰ誘導の波形がすべて下向き(P波・QRS波・T波が陰性化)になり、右胸心や重篤な心筋障害と酷似した偽異常波形が描出されます。波形チェックの第一歩として「Ⅰ誘導のP波が上向きか」「aVR誘導のP-QRS-Tがすべて下向きか」を確認する習慣をつけることで、この装着ミスは瞬時に見抜くことができます。
また、女性患者や肥満患者において、乳房組織の上からV3〜V5を貼ってしまうミスも頻発しています。乳房組織の上から貼ると誘導電極の位置が高位になり、V1〜V3で異常Q波様の陰性波形が形成され、前壁中隔梗塞と誤診されるリスクが生じます。電極は必ず乳房を持ち上げ、乳房下の胸壁に直接貼付しなければなりません。