ナブナ氏の楽曲が持つ唯一無二の「哀愁」と「夏の終わりのノスタルジー」は、綿密に計算されたコード理論の上に成り立っています。『夜明けと蛍』の全体を支配しているのは、「IVmaj7 → V → IIIm7 → VIm」を基調とする、いわゆる王道進行(Just The Two Of Us進行の派生)です。
Play Dの視点で分析すると、展開は以下のように進行します。
【サビのコード進行】:Gmaj7 → A → F#m7 → Bm7 (IV → V → III → VI)
この進行の最大の特徴は、主音であるトニック(I:D)から始まるのではなく、サブドミナント(IV:G)から浮遊するように始まる点にあります。聴き手に「どこか宙に浮いているような切なさ」を感じさせ、解決しきらない感情の揺らぎをコード進行そのものが雄弁に物語っています。
さらに、メロディラインとコードのテンションノート(9th、major 7th)が美しく衝突し、夜明け前の薄暗い空が徐々に白んでいくグラデーションのような色彩感を耳にもたらしています。