ネット検索やSNSの口コミを見渡すと、「フランス人は10着しか服を持たないというのは嘘」「フランスに住んでいたがみんな普通に服をたくさん持っている」という指摘が散見されます。この真偽を結論から言えば、「文字通りすべての服が合計10着だけ」という意味であれば誇張であり誤解です。
原著で描かれているのは、アメリカからパリの貴族階級の家庭(マダム・シックの家)へ留学した著者が目撃した、1シーズンにローテーションする主要な服が約10着だったという事実です。パリの典型的なオスマン様式のアパートメントは収納スペースが非常に限られており、大きなウォークインクローゼットを備えた住居はごく一部に限られます。そのため、物理的にも「厳選した服だけを手元に置く」生活様式が自然と定着しています。
また、フランス人女性全員が10着で暮らしているわけではありません。ファストファッションを楽しむ若年層もいれば、トレンドを追うファッショニスタも存在します。しかし、成熟した大人の女性ほど「自分のシグネチャースタイル(定番の型)」を確立し、流行に振り回されず上質な服を何年も手入れして着回す傾向が強いのは紛れもない事実です。「10着」という数字は厳格な制限令ではなく、ワードローブを自分で掌握できる適正量を示すシンボルと捉えるのが正確な理解と言えます。