恋愛ソングの歴史において、「運命の二人」や「一つに溶け合う愛」を謳う楽曲は枚挙にいとまがありません。しかし、野田洋次郎が『最大公約数』で提示したのは、「人はどれだけ愛し合っていても、決して完全に同じ存在にはなれない」という冷徹なまでのリアリズムでした。
歌詞の冒頭から描かれるのは、「僕にあって君にないもの」と「君にあって僕にないもの」という決定的な差異です。一般的な恋愛観であれば「お互いの欠けたピースを埋め合わせる」という足し算のロジックになりがちですが、本作では割り算の余りと共通項に着目します。数学における最大公約数とは、異なる二つ以上の整数に共通する「最大の約数(割り切れる数)」を指します。つまり、どれほど価値観や生い立ちが異なっていても、二人の間で共有できる唯一無二の合意点を見つけ出そうとする姿勢そのものが描かれています。
特にファンの間で名フレーズとして語り継がれるのが、「二人の歩幅を合わせる」行為の描写です。歩幅が違えば、どちらかが無理をして大股になるか、小股で我慢しなければなりません。しかし本作では、「歩くスピード」や「足のサイズ」の違いを認めつつ、そのズレさえも愛おしいものとして肯定します。「足して2で割る」ような妥協の平均値ではなく、互いの独立した個性を尊重した上で導き出される共通項こそが、野田洋次郎の導き出した愛の答えでした。