はしかの最大の特徴は、病原体の中でも群を抜く感染力の強さにあります。飛沫感染や接触感染にとどまらず、ウイルスが空気中を漂って広がる空気感染(飛沫核感染)を起こすため、同じ空間に一定時間滞在しただけで感染が成立する恐れがあります。
感染症疫学における基本再生産数(1人の感染者が免疫を持たない集団で何人にうつすかを示す指標)を比較すると、季節性インフルエンザが1〜2、新型コロナウイルス(オミクロン株)が8〜10程度であるのに対し、はしかは「12〜18」に達します。免疫を持たない人が感染者と同じ部屋にいれば、すれ違った程度でも高確率で感染する計算です。
自治体から「東京 はしか 立ち寄り先 公表」として新幹線、JR各線、地下鉄の利用履歴やイベント会場、大型商業施設が具体的に発表されるのは、この圧倒的な空気感染リスクゆえに、同じ時間帯に居合わせた人々へ迅速な受診行動を促すための危機管理措置に他なりません。
SNS上でも「同じ電車に乗っていたかもしれない」「立ち寄り先に自分がいた日が含まれていて不安」といった投稿が急増しています。しかし、慌てて一般の医療機関へ直接駆け込むと、待合室で二次感染を拡大させる危険があります。公表された日時に心当たりがある場合は、まず最寄りの保健所や受診予定のクリニックへ事前に電話連絡し、指示を仰ぐのが鉄則です。