『あとひとつ』を語る上で欠かせないのが、元メジャーリーガーであり東北楽天ゴールデンイーグルスで数々の伝説を打ち立てた田中将大投手の存在です。ファンモンのシングルといえば「有名人の顔写真アップ」がトレードマークでしたが、本作では高校野球(駒大苫小牧高校時代)で甲子園の頂点と敗北の双方を味わった田中投手に白羽の矢が立ちました。
ジャケット撮影当時、田中投手は既にプロのトップスターでしたが、カメラの前で見せた真剣な眼差しと零れ落ちる汗の質感は、汗と土にまみれるすべての挑戦者を象徴するアイコンとなりました。そしてこのコラボレーションは、単なるプロモーションを超えた歴史的ドラマへと結実します。
2013年11月3日、楽天生命パーク宮城で行われた日本シリーズ第7戦。前日に160球を投げ完投負けを喫していた田中投手が9回表のマウンドに向かう際、スタジアムに『あとひとつ』が鳴り響きました。球場を埋め尽くした観客による自然発生的な大合唱は、プロ野球史に残る感動的なワンシーンとして語り継がれています。音楽がアスリートの闘志を支え、アスリートの気迫が音楽に新たな命を吹き込んだ瞬間でした。