彼を取り巻く言説の中で、長年根強く存在していたのが「福田雄一監督作品を中心とした出落ち要員・コミカル専門の俳優」という先入観です。『今日から俺は!!』や『親バカ青春白書』でのインパクトが強烈だったあまり、一部のライト層からは「変顔やハイテンションな奇声が持ち味のタレント」と矮小化されて受け止められる時期がありました。
しかし、これは戸塚の演技設計におけるごく一部の側面に過ぎません。彼の真骨頂は、過剰なギャグの裏側に「哀愁」を忍ばせる引き算の技術にあります。CSフジテレビTWO『純喫茶に恋をして』での静かな一人芝居や、深夜ドラマで見せる市井の冴えない青年のリアルな心情吐露など、ミニマルな空間でこそその繊細なリアリズムが光ります。
朝ドラ『虎に翼』での熱演は、この誤解を完全に打破しました。豪快な怒号の奥にある傷つきやすさ、不器用な手の震え、言葉を選びながら紡ぐ沈黙——それらは徹底した人間観察と、かつて工業高校で機械の微細なズレをミリ単位で調整していたクラフトマンシップにも通じる緻密な計算に支えられています。「面白いだけの男」というレッテルは、現在では完全に払拭されたと言えます。