「シンデレラ城のモデルはどこにあるのか」という問いに対し、ディズニー社が残したデザインコンセプトや歴代イマジニアの証言を統合すると、最も有力なインスピレーション源として挙げられるのはフランスのロワール渓谷に点在する古城群と中世ヨーロッパの城郭建築です。
童話『シンデレラ』の原作者であるシャルル・ペローが物語の着想を得たとされるのが、フランスのユセ城(Château d'Ussé)です。ロワール川の支流に佇むユセ城は、15世紀から17世紀にかけて築かれた城塞で、幾重にも重なる白い小塔や複雑な屋根のラインが特徴です。ペロー自身がこの城に滞在して童話を執筆したという歴史的背景もあり、シンデレラ城の精神的ルーツとして極めて強い結びつきを持っています。
さらに、外観の優美さと気品を形作る上で大きな影響を与えたのが、同じくロワール地方のシュノンソー城やシャンボール城です。シェール川をまたぐように建てられたシュノンソー城のアーチ構造や繊細な装飾、そしてレオナルド・ダ・ヴィンチが設計に関与したとも伝えられるシャンボール城の無数の塔や煙突が織りなすスカイラインは、シンデレラ城の上層部デザインに明確に投影されています。
一方で、土台部分の力強さと堅牢な城塞構造のヒントになったのが、スペイン・カスティーリャ地方にそびえるセゴビア城(アルカサル)です。断崖絶壁の上に突き出す船の舳先のような巨岩の土台と、スレート葺きの円錐型屋根を持つ円塔のコントラストは、シンデレラ城が単なる華奢な宮殿にとどまらず、威厳ある王城としての風格を備える決定打となりました。