吉沢亮という表現者の名前が映画賞レースの最前線に刻まれたのは、2019年の第42回日本アカデミー賞でした。行定勲監督が岡崎京子の伝説的コミックを実写化した『リバーズ・エッジ』において、自らのセクシュアリティと平坦な日常に潜む暴力を静謐に体現した山田一郎役が高く評価され、新人俳優賞を受賞しました。この受賞は、彼が単なるティーン向け少女漫画の実写化キャラクターに留まらない、鋭利な刃物のような危うさを秘めたアクターであることを業界内外に知らしめる契機となりました。
そのわずか1年後、2026年3月6日に開催された第43回日本アカデミー賞において、吉沢亮は映画『キングダム』の嬴政および漂役で、並み居るベテラン俳優陣を抑えて最優秀助演男優賞に輝きました。2年連続の登壇、そして助演男優賞部門の頂点へと上り詰めたスピード感は、近年の日本映画界でも極めて異例の快挙です。
当時、第43回の最優秀助演男優賞ノミネート枠には、綾野剛(『閉ざされた病棟 -それぞれの朝-』)、伊勢谷友介(『飛んで埼玉』)、柄本佑(『アルキメデスの大戦』)、佐々木蔵之介(『空母いぶき』)といった百戦錬磨の実力派が顔を揃えていました。その錚々たる顔ぶれの中から20代中盤の吉沢亮の名前が呼ばれた瞬間、会場に走った緊張と惜しみない拍手は、新世代の旗手が映画界のメインストリームを奪取した象徴的な一幕でした。