義勇を語る上で避けて通れないのが、他の柱たちから「尊大で見下している」と激しい反発を買った名台詞「俺はお前たちとは違う」の真意です。この言葉の裏側には、胸を引き裂くような過去の悲劇と、深刻な心理的葛藤が存在していました。
幼少期、義勇は鬼の襲撃を受けました。その際、祝言を間近に控えていた実の姉・蔦子(つたこ)が、義勇を隠して自らが身代わりとなって命を落とします。さらにその後、鱗滝左近次の門下で出会った無二の親友・錆兎(さびと)は、最終選別において藤襲山の鬼をほぼ一人で討伐し、他の候補生全員を救いながら、最後に手鬼によって命を奪われました。その救われた候補生の中に、意識を失って何もできなかった義勇本人が含まれていたのです。
「一匹も鬼を倒せず、錆兎に生かされただけの自分が、なぜ水柱の席に座っているのか」。義勇の「俺はお前たちとは違う」という発言は、他者を見下す傲慢さではなく、「自分には柱を名乗る資格など微塵もない、お前たちのように立派な実力者と肩を並べる資格すらない」という、極端な自己卑下と自罰感情の吐露でした。心理学でいう典型的な「サバイバーズ・ギルト(生き残り罪悪感)」に囚われていたのです。
テレビアニメシリーズおよび劇場版で義勇の声を演じる声優・櫻井孝宏氏は、義勇の台詞回しについて、冷酷さではなく「他者との距離の測り方が分からず、感情のピントがズレてしまっている不器用さ」を繊細に演じ分けたと各種メディアのインタビューで語っています。言葉の足りなさと過度の自己防衛が重なった結果の孤立であったことが、炭治郎の愚直なまでの対話によって氷解していくプロセスは、本作屈指の人間賛歌といえます。