美輪明宏のキャリアを語る上で欠かせないのが、文豪・三島由紀夫との運命的な出会いと深い精神的交歓です。銀巴里の客席から美輪の才能に惚れ込んだ三島に対し、美輪は決して媚びることなく、「先生の小説は知性があっても愛嬌がございませんね」と対等に言葉を交わしたと伝えられています。傲慢な知性派であった三島が、当時まだ20代前半だった美輪の審美眼と気品に一目置いた瞬間でした。
二人の共同作業の最高峰となったのが、江戸川乱歩原作、三島由紀夫戯曲による舞台『黒蜥蜴』(1968年初演)です。稀代の女盗賊・黒蜥蜴役に三島自ら美輪を指名。「この世で最も美しい悪の華」を演じた美輪明宏の演技は空前の絶賛を浴び、三島に「美輪君の黒蜥蜴は、天上界の美を地上に現出させた」と感嘆せしめました。
1970年11月25日、三島由紀夫が市ヶ谷の自衛隊駐屯地で自決を遂げる数日前、美輪の楽屋へ深紅の薔薇の花束が届けられた逸話はあまりに有名です。「あの薔薇は、先生がこの世に残した最後の別れの言葉だった」と、後年のインタビューで美輪は万感の思いを込めて回想しています。知性と美意識の極致で共鳴し合った二人の関係は、昭和カルチャーの金字塔として語り継がれています。