直木賞作家・小川哲の現在地|東大院の真相から代表作の衝撃まで徹底追究

直木賞作家・小川哲の現在地|東大院の真相から代表作の衝撃まで徹底追究

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1986年12月25日、千葉県千葉市に生まれた小川哲の歩みは、日本の純文学・エンタメ界の王道を歩んできた作家たちとは明確に一線を画しています。渋谷教育学園幕張高等学校という屈指の進学校を経て、東京大学教養学部(理科一類)へ進学。その後、文系分野である教養学科表象文化論分科へと進み、同大学院総合文化研究科の博士課程へと進学しました。

専攻していたのは科学史・科学哲学。特に進化論を提唱したチャールズ・ダーウィンや、夭折のSF作家・伊藤計劃の作品世界を学術的に検証する研究に没頭していました。当時のインタビューや手記において、小川本人は「大学院時代は朝から晩まで研究室に籠もり、先行研究の論文を読み漁りながら論理の破綻を検証し続ける日々を送っていた」と振り返っています。しかし、研究者としてのキャリアを着実に歩んでいた最中、博士論文の執筆過程で大きな転機が訪れます。

自らの思考を論文という厳密な学術フォーマットに落とし込む作業を続ける中で、既存の事実を整理するだけでなく、「自らの手でゼロから世界を構築し、仮説を極限まで駆動させたい」という衝動が抑えがたくなったと語られています。小川は大学院を単位取得満期退学し、専業作家への転身を決断。2015年、カンボジアのポル・ポト政権下を舞台にしたディストピアSF『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞し、華々しいデビューを飾りました。

アカデミズムの最前線で培われた徹底的な資料読解力と論理的思考力は、のちの創作において他の追随を許さない「解像度の高さ」として結実することになります。単なる学歴の看板にとどまらず、思考のフレームワークそのものが研究者レベルである点こそが、小川哲という作家の特異性を決定づける根幹です。

佐々木 一輝
著者

佐々木 一輝

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。